2026.03.04
デザインと心理学のあいだで揺れながら見つけた、違いを“わかちあう”という仕事
- LIGHT THE WAYのこと
目次
人は、同じものを見ていても、人によって感じ方は少しずつ違う。
同じ景色を前にしても、怖いと感じる人もいれば、落ち着くという人もいる。その違いは「間違い」ではなく、ただの「違い」だと思っています。
振り返ってみると私のクリエイティブの原点は、その「違い」に惹かれてきたことにありました。自分がつくったものに、さまざまな反応が返ってくる。その思考のずれや広がりに触れる瞬間が、たまらなく面白かったのだと思います。
こんにちは。2024年に入社した、ディレクターの山下さくらです。
私がなぜこの道を選び、映像をつくっているのか。作品を誰かに届けることの面白さに気づいた原体験や、デザインと心理学の間で揺れた進路選択、そして映像という表現に辿り着いた理由を振り返ってみたいと思います。物事をどのように捉え、どんなことを考えながらこの仕事をしているのか、私なりに言語化してみました。
「つくる→みせる→反応がうまれる」が、いつも楽しかった
イラストを描くことが好きな私は、中学時代まわりで流行っていた動画投稿SNSミクチャで、楽曲にあわせてイラストを描き、動画にして投稿していました。
完全に趣味の延長線で、「あわよくば誰か見てくれたらいいな」くらいの気持ちでやっていたので、正直そんな簡単に反応が返ってくるとは思っていませんでした。けれど投稿して間もなく、20件ほどのコメントをもらったのです。その一つひとつが本当に嬉しくて、今でもよく覚えています。「絵も上手だしお話が面白い!」そんなコメントから、誰かがきちんと見てくれて、何かを感じ取ってくれたことが伝わってきて、胸が熱くなりました。初めて、受け取り手の存在を強く意識した瞬間でした。
驚いたのはそれだけではありません。数日後、私の使った楽曲を使って、他のユーザーが同じようにイラストの動画を投稿しているのを見かけました。もしかして、私の投稿がきっかけだったのかも?自意識過剰ですが、そう思った瞬間、ただのひとりごとだった作品が、画面の向こうの誰かの行動につながった感覚がありました。顔も名前も知らない誰かとつながれたこと。このときの喜びは、今の仕事にも深くつながっていると思います。

中学高校時代のお絵かきあつめ 友人を描くのが大好きでした
違いがあるから、面白い。だから、伝えたくなる
小学生の頃から友だちと漫画を描いて見せ合っては、発想の違いにわくわくしていました。突飛なキャラクターや予想外の展開が生まれることがとにかく面白かったんです。図工の時間も同じです。同じモチーフを描いているはずなのに、完成した作品はまったく違う。人によって見え方が違うことがずっと不思議でした。
この、違いに惹かれる気持ちは、やがて「人の心」そのもの、心理学への興味へとつながっていきました。
心理学という言葉を本格的に意識したのは、中学生の頃に読んだ心理学をテーマにした漫画がきっかけです。人の感じ方や考え方には構造があることを知りました。人によって答えが違うのは当然なのだと気づいたとき、私は心理学の世界にぐっと引き込まれました。高校の進路選択では、心理学とデザイン、どちらを学ぶか本当に悩みました。心理学は、人の見えない部分にある違いを知れる面白さがある。一方で、ものをつくることで違いを楽しみながら誰かとつながれるデザインも捨てがたい。悩み抜いた末に選んだのは、デザインの道でした。挑戦するしかない!と腹を決め、芸術表現の幅広い大学に進学しました。

大学時代の愉快な友人たち 作品の撮影を手伝い合いながら課題をやっていました
つくることから、どう伝わるかを考えるようになった
大学時代、「伝え方」についての考えを大きく揺さぶられた出来事が二つあります。
ひとつは、映像を「つくる」から「設計する」へと捉え直したことです。
初めての映像制作では、チュートリアル課題として「さくら」という自分の名前をテーマにアニメーションをつくりました。桜モチーフではなく、ひらがなの「さ・く・ら」を一画ずつ分解し、ウサギのキャラクターを生み出して短い映像にしました。講評で先生は、最初こそポカンとしていましたが、見終わったあとに「なるほどね!」と大笑いしてくれたんです。映像の内容はくだらないものですが、自分の作ったもので誰かが笑ってくれたことが、すごく嬉しかった。映像は、見る人の時間と感情の流れを設計できる表現なのだと実感した出来事でした。同じ内容でも、見せる順番や間ひとつで、受け取り方は変わる。動きや時間軸が加わることで、驚きや納得が生まれる。それまで感覚的に映像をつくっていた私にとって、「どう見せればどう伝わるのか」を考える体験は、大きな転換点でした。

大学ではじめて作ったアニメーション 今見ると色々というか全部が気になりますね
もうひとつは、美術館での実習で体験した、対話型鑑賞です。
作品を見ながら、どう見えたか、何を感じたかを、対話という形で言葉にしていくプログラムでした。同じ暗い森が描かれた絵を見ているはずなのに、「怖い」と言う人もいれば「落ち着く」と言う人もいる。どれが正解という話ではなく、受け取り手の数だけ視点がどんどん増えていく感覚です。印象的だったのは、誰かの発言によって作品の見え方が変わっていくことでした。誰かの一言で、作品の印象が少し変わる。自分の言葉が、誰かの解釈に影響を与える。逆も然りです。表現とは、つくって終わりではなく、受け取られてはじめて意味を持つものなのだと、改めて感じた体験でした。そして、進路選択で選ばなかったはずの心理学が、思いがけず戻ってきた瞬間でもありました。
今、ディレクターとして仕事をする中で、この二つの経験が重なります。
映像は、見る人の時間の流れを組み立てながら、感情の動きをつくっていく表現です。
一方で対話は、ひとつの物事に対する見方や解釈を増やし、視野を広げていく営みです。
ディレクターの仕事は、その両方を横断することだと感じています。
企画の意図を言葉で共有し、チームやクライアントと対話を重ねながら方向性を定め、最終的に映像として形にする。その映像が、また誰かの受け取り方を少しだけ動かす。影響し合う。
そのわかちあいは、幼い頃から続いていた違いを楽しむ感覚の延長線にありました。
そして今その感覚を、どう伝わるかを考える仕事として扱っています。
違いがあることを前提に、どうすれば意図が正しく届くのかを設計する。
それが、現在の私がディレクターとして向き合っていることなのだと考えています。
デザインと心理学のあいだに、映像があった
デザインは、「伝え方を組み立てる力」と「人の感じ方を想像する力」の両方を必要とします。そこには心理学的な視点が活かせると思っています。
たとえば「赤は食欲を高める色」「青は冷静さを与える色」など、色が人に与える印象は心理学的に研究されています。 そうした“人の受け取り方”を知った上で、どう組み合わせてどう届けるかを考える。この設計こそがデザインであり、映像制作の面白さです。
映像は、音・動き・間・雰囲気…と、共有できる情報がとにかく多い。情報の見せ方が少し変わるだけで、同じ内容でも受け取られ方は大きく変わってしまいます。だからこそ、伝えたいことを正しく届けるのは簡単ではありません。でも、難しいからこそ面白い。正解が一つではない中で、最善の形を考え続ける。心理学で人の感じ方を知り、デザインで構造を組み、映像で体験として届ける。
私にとって映像は、違いをなくすための手段ではなく、違いがあることを前提にしながら、同じ時間や感覚をわかちあえる表現です。見る人それぞれに違う受け取り方が生まれるからこそ、映像は一方通行では終わらない。そこに、心理学とデザイン、映像のそれぞれの面白さが詰まっていると感じています。
正解のない問いに、チームで向き合う毎日
いま私はLIGHT THE WAYで、企画から撮影、編集、デザイン、シナリオやコピー作成、進行管理まで、幅広く関わっています。ディレクターとして全体を見ている日もあれば、自分の手を動かして編集やデザインをしている日もある。役割が固定されていない分、視点を切り替えながら考える毎日です。
現場で強く感じるのは、仕事のほとんどが、正解のない問いだということです。
この映像は本当に伝わるのか、この構成で意図は届くのか、そもそも何を一番伝えるべきなのか。決まった答えが用意されているわけではなく、見る人やクライアント、時代によって最適解は変わっていきます。
だからこそ、一人で完結する仕事ではありません。プロデューサー、ディレクター、カメラマン、デザイナー、エディター、それぞれの視点や経験を持ち寄って、こうしてみるか?ああしてみるか?と議論を重ねてすり合わせていく。そのプロセス自体が、私にとってはひとつの「わかちあい」だと感じています。自分では気づかなかった見え方を教えてもらったり、逆に自分の視点が誰かの発想のきっかけになったり。学生時代に感じていた「人によって見え方が違うのが面白い」という感覚が、形を変えて、今もここに続いている気がします。
答えが決まっていないからこそ、考える余地があって、チームで向き合う意味がある。大変だけど、やっぱり楽しい、けどやっぱり大変だ!みたいな毎日を過ごしています。
「好き」から広がる景色
最後に、少しだけ余談を!
大学時代、私はK-POPにどっぷりハマっていました。深夜、終わらない課題の合間にMVを見ては、自分を奮い立たせていたのを覚えています。今では私より母の方が夢中になっていますが…。(ちなみに私はSEVENTEENのウジさんが推しです!)
K-POPの魅力は、洗練された音楽やダンスだけでなく、コンセプトや表現を柔軟に変えながら世界に挑む姿勢にもあると感じます。大胆に世界観を更新していくクリエイティブには、いつも大きな刺激を受けています。これからは映像づくりを深めながら、エンタメやカルチャーの文脈にも関わっていきたいです。わかちあう楽しさと、違いを面白がる感覚を大切にしながら、映像と向き合っていこうと思います。

推しの事務所の前で感激しているご様子








